有名な話だけれども、まず、航空燃料だけを増産するわけにはいかない…というのが一つ。石油を精製して作られるのが航空燃料だけれども、その過程で生産される、有り体に言うと副産物がいくつもあり、それらの需要が無ければ安価な航空燃料は供給されない。航空燃料は、石油生産品の中でもかなりの上澄みにあたるので、実際は安定供給が難しい代物になる。では、何がネックになっているのかというと、幾つかの原因があるが、その中でも最も分かりやすいのが昨今の反プラ製品ムーブメント。プラスチック類も石油精製の過程における副産物にあたるので、これの消費が無ければ、安定的な航空燃料生産は行われなくなる。
そして、次に重要なのが、誰が航空燃料を必要としているか。先程も書いた通り、航空燃料は上澄み生産物になるので、市場において常に争奪戦が繰り広げられている。ここでキーポイントとなるのが、航空輸送において日本周辺の極東アジアはメインとなっていないという事実。日本は僻地であり、かつ航空機の経由地としても規模が小さいので、希少な航空燃料は規模の大きい上海・香港やシンガポールなどに奪われてしまう。さらに、今の時期は中東においてイスラム教の巡礼シーズンにあたるので、金回りの良いそちらに優先的に配分される。要は、日本の市場規模が小さすぎて、全く相手にされていないということになる。買い負けているわけだ。これらの事実は、政府レベルのタスクフォースなんぞを立ち上げても、まるで意味がないということを示している。
イスラム教の巡礼というのは、実は航空機業界において主客のひとつになっている。というよりも、最上位客だろう。東ヨーロッパから東アジアのユーラシア大陸全域に加えて、東南アジア全域にもムスリムは多い。北アフリカや東アフリカにもいる。これだけ広範囲にわたり存在しているイスラム教徒が決まったシーズンにメッカ巡礼を行うのだから、航空輸送業界にとってこれ以上にありがたい客はいない。
ぶっちゃけて言ってしまうと、日本人がいくら海外旅行をしたところで、イスラム教徒の規模にはまるで歯が立たない。旅行シーズンにラッシュなんて言ってるのをよくニュースで見ると思うが、航空業界の規模から見ると、あんなものは近所のスーパーの安売り争奪戦と変わらない程度の物でしかないということだ。だが、日本の航空会社にとってはこれでも唯一の稼ぎ時ではあるので、死活問題になっているという情けない現実が今の日本である。
- 元記事
-
航空燃料不足 成田空港でも週あたり60便近くに影響
https://news.ntv.co.jp/category/society/f170157fc03a46e7a503224ab0145a20
0 件のコメント:
コメントを投稿